キャリア
公開日:2026/06/08 最終更新日:2026/06/08

「ずらして、勝つ。」――30年のデータベース人生で気づいた、ベテランエンジニアの"戦い方"

「ずらして、勝つ。」――30年のデータベース人生で気づいた、ベテランエンジニアの"戦い方"

最前線で戦い続けることだけが、ベテランの戦い方じゃない。30年以上Oracleデータベースに携わってきた村岡さんは、年齢の壁に直面したことをきっかけに、AIとの対話で自分の本当の強みを捉え直しました。「やりたい」より「市場が求めるか」で場所を選ぶ──これからミドル・シニア世代を迎えるエンジニアに贈る、キャリアの考え方を伺います。

ベテランエンジニアの村岡さん(66歳/業界歴30年以上・Oracle DBA、オラクルマスター Gold 11g)

最前線で戦い続けることだけが、ベテランの戦い方じゃない――。

「年齢を重ねるほど、案件は厳しくなる」。多くのエンジニアが、いつかは向き合う現実かもしれません。Oracleデータベースの専門家として30年以上のキャリアを築いてきた村岡さんも、その壁にぶつかった一人です。けれど村岡さんは、正面から戦い続ける道とは別の"勝ち方"を見つけました。きっかけは、AIを相棒にした「自分はそもそも何の専門家なのか」という問い直し。これからミドル・シニア世代を迎えるすべてのエンジニアにとって、自分の強みの活かし方を考えるヒントになるお話です。

専門性があっても、年齢で「書類選考」に通らなくなる現実

――Oracleデータベース一筋で30年以上。これだけの専門性があっても、案件探しでは厳しさを感じる場面があったそうですね。

そうなんです。一番大きいのは、やはり年齢ですね。実際に66歳で次を探すと、書類選考の段階で見送られてしまう。面談の場にさえ立てれば、これまでの経験はきちんとお伝えできるという自負はあるのですが、そこにたどり着けない。これは精神論ではなく、現実でした。それに、Oracleのデータベースという領域には、20代・30代の優秀なエンジニアもたくさんいます。同じ土俵で正面から勝負しようとすると、年齢を重ねるほど、なかなか厳しいものがあるんですね。長年積み上げてきた専門性に誇りはあります。ただ、その専門性を"どう活かすか"は、一度きちんと考え直す必要があるのかもしれない――そう感じ始めていました。

AIとの"壁打ち"で問われた「あなたは何の専門家か」

――その状況を変えるきっかけが、AIとの"壁打ち"だったとか。

はい。Copilotを壁打ち相手にしました。もともとスキルシートの推敲に使っていて、私の経歴の流れをずっと理解してくれているんです。そこで「今回の案件探しはここが大変だった。これから先、どう打破すればいいか」と相談してみました。返ってきたのは、長年の経験で培った強みを、もっと前面に打ち出すべきだ、と。突き詰めると「あなたは結局、"何の"専門家なのか」を問われた感覚でした。「Oracleもできます、あれもできます」とあれこれ並べるほど、かえって何者なのか分からなくなってしまう。だったら、自分の強みを一度メタな視点で捉え直してみよう。AIとのやり取りは、その大事なきっかけになりました。

強みを"メタ"に捉え直す──製品知識より「整理して仕組みをつくる力」

――"メタな視点で捉え直す"。具体的には、ご自身の強みをどう捉え直されたのでしょうか?

私の売りは、ずっとデータベース、特にOracleの製品知識だと思っていました。でも改めて考えると、本当に得意で好きなのは、もう少し普遍的なレイヤーなんです。お客様の要件を読み取って整理し、リファクタリングして、「ベストな道はどれか」を組み立てていく――いわば情報の整理整頓ですね。正直、仕事の中で本当に楽しいと感じる瞬間は1割あるかどうかで、残りの9割は地道な積み重ねです。それでも続けてこられたのは、さまざまな条件や要件を踏まえたうえでの"仕組みづくり"に、一番魅力を感じているからだと気づきました。製品の名前ではなく、その下にある「物事を整理して、より良い選択肢を積み重ねていく力」。30年やってきたからこそ、そここそが自分の核なんだ、と捉え直せたんです。

「やりたい」より「市場にニーズがあるか」で場所を選ぶ

――強みを捉え直したうえで、活かす"場所"はどう選んでいこうと考えていますか?

基準にしたのは、自分のやりたいことやプライドよりも、「市場にニーズがあるかどうか」でした。需要は自分で作り出せませんから、市場があるなら、その市場に売り込みたい。そう考えたとき、面白い領域が見えてきました。AccessやVBAのような技術は、人気言語ランキングのトップ10には絶対に載りませんよね。だから若い人はあまり入ってこない。でも企業側を見ると、ユーザーが自分で作り込んだExcelやAccessの資産がレガシー化して、もう誰もメンテナンスできずに困っている。仕様書すら残っていない。そういう"課題の宝庫"が、実は再浮上しているんです。調べてみると、単価の面でも十分に納得できるような案件が、ちゃんと存在していました。若手が来ない場所こそ、分かっている人間が圧倒的に活きるのではないかと思ったんです。

後退ではなく「今、ある市場に飛び込む」

――長く第一線でやってきたデータベースから、あえてレガシー領域へ。"後退"とは感じませんか?

後退とは思っていなくて、むしろ自分にとっては"新たな市場へのチャレンジ"という感覚なんです。使い物にならない技術なら、とっくに残っていないはず。価値があるからこそ、残っているんですよね。それに、Oracleを捨てるわけでもありません。Accessをただいじれるだけの人とは違って、私は背後のSQLやデータベースの部分を、エンタープライズレベルで経験してきました。要件の整理からデータベース全般に網羅的に対応できる人間は、やはり希少だと思うんです。これまでの延長線上の市場を深めるのか、新しく見つけた市場に飛び込むのか――どちらも自分の中の"地層"として持っておいて、求められる場所で使い分ければいい。そう捉え直したら、選択肢はむしろ広がるのではないかと考えています。

これからミドル・シニアになるエンジニアへ

――最後に、これからミドル・シニア世代を迎えるエンジニアの方々へ、メッセージをお願いします。

一緒に働いていると、数年先までしか見ていない――「それまで何とか凌げればいい」という感覚のシニアが、まだ多いように感じます。でも、それはもったいない。ぜひ、自分の"生きざま"を見つけていってほしいんです。そうやって前向きに働く人が増えるほど、シニアエンジニアの市場そのものが育っていくと思うんですね。年齢で諦める必要はありません。自分の強みを捉え直し、市場が求める場所を選べば、まだまだ活躍できる。私自身は、自分を活かせる現場をいただけたら、そこで精一杯やって、一緒に働く人たちと幸せな関係を築いていきたい。それが一番大事にしていることです。これからも、需要に応えながら、挑戦し続けたいですね。

---30年かけて積み上げた経験を、そのまま"最前線での戦い"に使い続けるのではなく、視点を少し"ずらして"、自分の強みが一番活きる市場へ。村岡さんの選択は、レガシー(技術・経験資産)をフォース(力)へと変えていく一つの形でした。年齢そのものではなく、強みの"捉え方"と"置き場所"――この考え方は、世代を問わず、これからのキャリアを考えるヒントになりそうです。---

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